病院でいろいろな検査を受け、高血圧(本態性高血圧)と診断が付くと、意外に簡単に降圧剤を処方されることがあります。
重症の高血圧の場合は早急な対応が必要ですから投薬治療も止むを得ませんが、やはり薬には副作用というリスクがありますので、まずは主治医とよく相談の上、生活全般を見直して投薬以外の降圧療法から始めてみるのが良いでしょう。
減塩のススメ
高血圧の原因の項でも述べたように、塩分摂取に関する血圧への影響には個人差があることがある程度わかっています。ですが、どういう人に塩分の感受性があるのか無いのか、その是非を予め分かる方法はありませんので、医師から減塩を勧められた方はその指示に従うようにしてください。ただ、食生活における減塩の方法を具体的かつ事細かに説明してくれる医師はあまり多くは無いという現状もあります。減塩とひとことで言っても意外に気がつかないようなことや見過ごされていることもありますので、この項では減塩食のコツや減塩の注意点などを説明していきますので参考にしてみてください。
減塩食
食生活において、塩分は必要不可欠なもので、どんな食品にも大概入っています。日本人の食事には元来、味噌汁と漬物が欠かせないものでしたので、欧米などと比較して日本人は塩分摂取量が多いといわれています。厚生労働省の最新版の食事摂取基準を見ると、高血圧予防の観点において、成人男性が一日8g未満、成人女性が一日7g未満を目標とするとなっていますが、これでも、欧米の基準からすれば(特にアメリカは)まだ高めの設定となっています。すでに高血圧症と診断されている方は、一日6g以下の摂取としさらに減塩すべしとされています。
減塩食といっても、ただ塩分を減らしただけでは、それこそ味気の無い食生活になりかねません。減塩の所為で食欲まで失せてしまっては元も子もありませんので、そこにはちょっとしたコツが必要です。例えば、調味料に関しては、塩(ナトリウム)の代わりにカリウムを使った商品がたくさん出ていますので、それを使ってみるのも良いでしょう。減塩醤油、減塩味噌などがそれですが、近年では減塩に対する意識も高まってきていますので、食品のパッケージを見れば、大概の場合成分表示の一覧に「食塩相当量」が記載されていると思います。減塩と謳っていても中身に偽りのあるものもあるそうですので、この「食塩相当量」を常にチェックするようにしてください。
また、食品そのものも減塩、低塩を謳ったものが多くあります。日本高血圧学会が減塩食品のリストを公開していますので、こちらのページからそのリストをダウンロードできますので参考にしてみてください。
減塩料理
食材は予算が許す限り新鮮で良質なものを選びましょう。新鮮な食材は旨味成分も多く塩などで味をつけなくても素材本来の味付けだけでおいしく食べられます。また、カリウムが多く含まれる食材を選ぶのも良いでしょう。こんぶやひじきなどの海藻類、ほうれん草や小松菜、モロヘイヤなどの葉っぱ物、ジャガイモやにんじん、トマトやきゅうりなどの根野菜もカリウムが豊富に含有されています。果物のバナナやメロンに柑橘類、それとオレンジ100%のジュースなども効果的です。カリウムは塩分を尿と一緒に体外へ排出させる作用がありますので、食材としてふんだんに使いましょう。
※ただし、腎臓疾患等、カリウム摂取に制限のある方は注意してください。
料理にはスパイスを上手く使うのが効果的です。酸味や辛味をひとつ付け加えるだけで、塩分が少なくても食欲も増しおいしく食べることが出来ます。また、揚げ物には、レモンなどの柑橘類をソースや醤油の代わりに使えば、素材の味を壊すことなく効果的に減塩が出来ると思います。
減塩の注意
1)よく料理には何でも某メーカーの化学調味料を振りかける方がいます。化学調味料は、旨味成分としてグルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムなどが入っています。これらはナトリウムという名前の通り“塩辛くない塩”といわれていますので、過剰に摂取するのは止めましょう。また、ビタミンCのアスコルビン酸ナトリウムも同様ですので注意が必要です。
2)減塩を行う時に意外と見落としがちなのが、カップ麺やレトルト食品です。大手メーカーの人気カップうどんには、それ1食で6g近い食塩が入っていますし、レトルトのカレーやパスタソースにも、4〜5gの塩分量があります(塩分相当量)。これだけの量の塩分が入ってると、高血圧症の方にとっては最も忌避すべき食品となりますが、どうしても食べたい!という場合には、カップ麺は麺だけ食べて汁は残す、カレーやパスタソースの場合は、他の食事をほぼ塩分ゼロのものを選ぶなどの対策が必要ですが、そこまでして食べるのだったら、やはり食べない方が良いでしょうね。
ストレスを解消しよう!
現代社会にはストレスが溢れかえっています。そのストレスを一切浴びずに生活することは困難といわざるを得ません。ストレスがかかると自律神経の交感神経が過剰に反応し脈拍が増え血圧が上昇します。この状態が日常化すれ高血圧症を発症することにもなりかねません。高血圧症を予防するためにも、或いはすでにストレスが原因で高血圧症になった方にも、有効なストレス対策が必要になってきます。誰でも簡単にストレスを解消する方法は、スポーツや趣味に没頭することですが、それもストレスの程度や年齢、他の病気のあるなしによって制限があるでしょう。この項では以下の簡単なストレス解消法をお勧めします。
・座禅
一日の寝る前に20分ほど座禅を組んでみてください。座禅はストレスを受けた心身を正常な状態に快復させてくれます。これは脳科学的にも実証された方法なんです。
・自立訓練法
ストレスが原因で何らかの身体症状が現れた場合には、自律訓練法が効果的です。心療内科でも勧められる方法です。
※座禅と自律訓練法の詳細については、こちらの自律神経失調症の治療・改善法のページをご参照ください。
肥満を解消しよう!
体に余分な脂肪がつくと、そのぶん体内の血液量が増加して血管を圧迫することになり、血圧は上昇します。肥満は高血圧だけでなく、その他の成人病の原因ともなるので、少しずつでも良いので体重を減らす工夫をしましょう。そのためにはやはり食生活の改善が必要です。過食は余分なカロリーを摂るだけでなく、同時に塩分過多にもなります。また、アルコールはそれだけだと低カロリーのものが多いですが、どうしても塩辛いものを肴に摂取することが多いので、高血圧の方は控えるのが得策でしょう。
運動をしよう!
運動不足は当然肥満の原因にもなりますし、心肺機能の低下や動脈硬化につながりますので、高血圧を改善するためには運動不足の解消が重要になります。といっても、やはり年齢や高血圧の程度によって出来る運動にも個人差があると思います。むしろ激しい運動は逆効果にもなりますし、重いものを持ち上げるような負荷をかける運動は避けるべきでしょう。一番良いのは、良質な有酸素運動ですが、だからといっていきなりジムに通ってランニングしたりするのは止めてください。ゆっくりと自分の状態に合わせた、軽いウォーキングあたりから始めるのが良いと思います。何事も過ぎたるは及ばざるが如しですので、長く続けられる適度な運動を心がけるようにしてください。
東洋医学にも目を向けよう!
東洋医学(漢方)は、陰陽五行思想に基づいた、個人個人に合った治療法を受けられるのが特徴です。鍼灸とツボ押しに代表される治療法は、西洋医学の“悪い部分だけを取り除く”治療法ではなく、体と心をひとつのものとして捉え、全身のバランスを整えることで、患者さん自身の自然治癒力を高めようとするものです。ストレスやアレルギー症状をはじめ、生活習慣病としての高血圧にも効果があるといわれていますので、通常の降圧療法を施しても、あまり効果が見られない方は、一度東洋医学からのアプローチを試みても良いかもしれません。