このページでは、多汗症の治療法や改善法、対策等を分かり易く解説したいと思います。
多汗症の改善法
多汗症の治療法といえば、すぐに手術を連想される方が多いかもしれません。でも、リスクや副作用のある手術は最後の手段と考えましょう。一般の治療・改善法に加え、民間療法や東洋医学によるアプローチなど、手術を考える前に出来ることがたくさんあります。
まず、一般的な治療・改善法としては次のものがあります。
- 塩化アルミニウムの制汗剤
- ボトックス注射(ボツリヌス毒素皮内注射)
- イオントフォレーシス
- 星状神経節ブロック術
- 心理療法
ひとつずつ説明していきましょう。
■塩化アルミニウムの制汗剤
塩化アルミニウムは、元々医師の処方が必要な薬剤でしたが、医薬部外品としても市販されるようになりました。また、一部制汗スプレーにも配合されており、かんたんに汗を止める手段として効果が確認されています。ただし、使用を中止すればまた汗が出てきますので、一時的に汗を止めたい場合に使いましょう。
■ボトックス注射
ボトックス注射は、しわを目立たなくさせるなど、美容分野で広く使われていますが、近年では多汗症やワキガにも効果があることがわかり、一般的な多汗症治療法として認知されるようになりました。
発汗に関係する筋肉や神経に作用するボツリヌス毒素といわれる成分を、皮内注射をすることで、異常な発汗を抑制することが出来るのですが、1回の使用で効果が持続するのは3〜4ヶ月といわれていますので、継続する場合には再度注射する必要があります。
また、その効果や持続期間には個人差があるようですし、倦怠感等の不快な副作用も報告されているので、ボトックスによる治療を行う場合には、専門医とよく相談することが肝要となります。
■イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは、局所性の多汗症の治療に用いられることの多い治療法です。汗の出る部分を水道水に浸し、そこに微弱な電流を通電することで、汗の出る線(エクリン線+アポクリン線)をブロックして、発汗を抑える事ができます。
方法が簡単で費用も安く済みますが、治療期間が長くかかる上、効果には個人差もあり、根治を期待することも出来ません。ただし、副作用が少ないので、手のひらや足の裏、腋の下の多汗に悩んでいる方は、一度試してみる価値はあろうかと思います。
■星状神経節ブロック術
星状神経節という交感神経を制御している部位のそばに、局所麻酔薬を注射し交感神経の作用を遮断することで多汗症を治療します。ただし、効果が継続するのは1年未満といわれており、この治療法でも根治は出来ません。
■心理療法
多汗症の原因の項でも述べたとおり、最近の多汗症の原因は、心理的なストレスや抑圧、極度の緊張など精神的な要素が多くなってきており、心療内科的なアプローチが効果を発揮することも少なくありません。
心理カウンセリングによりストレス要因を探りだすことで、対処法が見つかる場合や、自律神経のバランスを整える自律訓練法や、抗不安薬などの投薬治療が有効な場合もあるでしょう。特に精神性発汗が酷い方は一度検討されてもよいかと思います。
多汗症の治療・改善法には、一般的な治療法以外にも効果が期待できる方法があります。
■運動療法
適度な有酸素運動は、血行を促進し、心身をリラックスさせる効果があるので、自律神経のバランスを整え、交感神経が過剰に働くことを抑制してくれます。体を動かせば当然温熱性発汗が起こりますが、正常な汗腺の働きを促進させることにもなりますので、日頃からの適度な運動を心がけるようにしてください。
■食事療法
多汗症は交感神経の過敏な反応が原因のひとつですので、食品を摂取する場合にはまず、交感神経を過剰反応させないよう注意が必要です。唐辛子の辛味成分カプサイシンを摂取すれば汗が大量に出るのは一般的にもよく知られていますが、コーヒー、紅茶、日本茶やコーラなどの清涼飲料水に含有されるカフェイン、タバコのニコチンなども交感神経を過剰に刺激させるので、多汗症の方はなるべく摂取しない方が良いでしょう。
食事をすると必ず体温は上がります。体温が上がれば体温調節のために発汗現象が起こります。なかでも、肉類などのタンパク質が最も体温を上げることがわかっています。ですので、多汗症の方はなるべく肉食を避け、魚中心の食生活に見直したほうが良いそうです。
また、女性の場合の多汗症には、豆類の摂取が良い効果を生みます。これは、女性の多汗症にはホルモンバランスが影響しているので、豆類などに多く含まれているイソフラボンが、このホルモンバランスを整える働きがあるからだそうです。
さて、最後に手術による治療法に触れておきます。
■交感神経切除術・ETS
正確には、胸腔鏡下胸部交感神経節切除術といい、手掌多汗症の治療のために行う手術です。多汗は交感神経の過敏な反応によって起こりますので、胸から内視鏡を挿入し直接交感神経節を電気メスなどで切除します。この手術によって確実に手掌多汗症は治癒しますが、多くの場合代償性多汗という副作用が起こりますので、積極的におすすめできない治療法です。
※代償性多汗とは?
治療した部位とは別の場所に多汗症が出現する副作用です。