では、いったん自律神経失調症と診断されたとしたら、どのようにして治療をするのでしょうか?このページでは、その治療法や改善法、解消法などについて分かりやすく解説したいと思います。

 

自律神経失調症の治療・改善法

 

生活時間の見直し

 

自律神経失調症の原因のページでも述べましたが、生活時間や生活習慣の乱れが自律神経失調症の大きな原因となります。よって、まず自分の生活時間を見直すことからはじめてください。人間には体内時計というものがあって、起床から就寝までの自然なサイクルが凡そ決められています。それは古来より人間が受け継いできたものですので、その自然のサイクルに沿って生活することが、心身にとって最も良い効果を生み出します。

 

と言っても、いきなり自然のサイクルに沿って生活するのは、私達現代人にとってはなかなか難しい面もあるかと思いますので、とりあえず次に上げることから始めてみて下さい。

  • 午後11時から午前0時の間には床に就くこと。(これが一番大事)
  • 睡眠時間は7時間を厳守(多すぎても少なすぎてもダメ)し、朝6時から7時の間には起床すること。
  • 3度の食事は毎日決まった時間に摂ること。

決まった時間に眠りに就き、決まった時間に起床する。この当たり前のことを実践するだけでも、交感神経副交感神経は自分の役割分担をきちんと果たすようになります。また、食事中は主に副交感神経が優勢になることから、決まった時間に食事をすることも、自律神経のバランスを整えることには大切なことなんです。

 

ストレスを解消する。

 

現代はストレスの時代です。社会システムの複雑化や、生活環境の多様化に加え、劣悪な労働環境や異常気象など、私達を取り巻く環境には、自律神経に変調をもたらすストレス要因が溢れかえっているのです。

 

では、これらのストレス要因はどのようにして解消すれば良いのでしょうか?

 

昔からストレス解消には、スポーツに熱中したり、好きな趣味に没頭したりするのが良いといわれていますね。好きなことを無心にやっている時には自然と集中してしまいますが、実はこのことは科学的にも実証されていることなんです。

 

集中性緊張解放という言葉があります。人が何かに集中している時には、アルファ波シータ波といった、心身のリラックス時に優勢に出現する脳波が出ているそうです。無心に集中することで脳波が変化し、私達を縛り付けていたストレス(緊張)から開放してくれるというわけです。

 

でも集中できる趣味やスポーツが無いという方もいらっしゃると思います。そこで、次にこれらの脳波を簡単に出現させる方法をお教えします。実はアルファ波やシータ波は、ヨガ座禅瞑想時にも多く出現することがわかっています。今から30年以上前に、東京大学の平井富雄博士が瞑想中の禅僧の脳波を計測し、そのことを実証しているんです。

 

座禅や瞑想と聞くと、何か私達の日常生活とは別次元のことと思いがちですが、何も実際に禅宗に入門して厳しい修行をしたり、禅の大家に弟子入りする必要はありません。あなたの自宅で、床に就く前のほんの10分から20分ほどの間、座禅を組むだけでもいいんです。

 

座禅の組み方は、ネットで検索すればいろいろと出てきますが、ここでは基本的なところだけ押さえておきます。

 

・脚の組み方
◇結跏趺坐(左足首を右脚太ももに乗せ、右足首を左足ふくらはぎ辺りに乗せる)
◇半結跏趺坐(左足首を右脚太ももに乗せるだけ)

 

このどちらかでも良いですし、また、左右は逆でも構いません。次に背筋をピンと真っ直ぐに伸ばし、両手を下腹の前辺りに重ねて置き、親指を立てて親指の腹をあわせます。ただし、肝心なのは安定した姿勢で座ることですので、杓子定規に作法通りにやらなくても良いと思います。

 

・視線
目は半眼にし視線は1メートル先ほどに落とします。
半眼にすることで気が散るようでしたら、目は閉じておいても構わないと思います。

 

・呼吸
呼吸は、ひと〜つ、ふた〜つと数を数えながら行います。まず、ひと〜つと心の中で唱えながら、ゆっくりと息を吐きます。次に息を吐ききった状態から息を吸うのですが、この時敢えて意識して息を吸わずに、自然に肺の中に空気が入ってくるのに任せます。そして今度は、ふた〜つと心の中で唱えながら、ゆっくりと息を吐きます。これを繰り返していくのですが、途中、ひと〜つ、ふた〜つと数を数えること以外の雑念が浮かんでくるようなら、また、最初に戻って、ひと〜つからやり直します。

 

最初は、すぐに雑念が浮かんでくるものですが、何度も何度も元に戻って、ひと〜つからやり直しているうちに、いつのまにか数を数えるということだけに集中できるようになってきます。先述したように、この状態になった時に、リラックス状態の脳波が出現するようになり、緊張状態から解放されるのです。

 

自律訓練法

 

心療内科を受診し、自律神経失調症と診断がつけば、自律訓練法を勧められる場合が多いと思います。自律訓練法は自己催眠の一種ですが、人が催眠状態にいるときには、手足が暖かくなるという事例が多いことから、逆に手足が暖かいという自己催眠をかけて、心身のリラックス状態を作り出そうというものです。実はこの方法は、ヨガや座禅とも通じるところがあり、アルファ波などのリラックス状態の脳波が出ることも知られています。

 

こちらも基本的な方法だけ押さえておきますが、心療内科に掛かられている方は、専門医の指導の下行うようにしてください。

 

・姿勢
椅子に座った状態、仰向けに寝た状態など、リラックスした姿勢で行います。

 

・言語公式
言語公式と呼ばれる言葉を心の中で唱えながら自己催眠に入ります。

 

・右手が重くなる。左手が重くなる。右脚が重くなる。左足が重くなる。両手両足が重くなる。
(手や脚が鉛や石のように重くなるイメージを描くとやりやすいです。)

 

・右手が温かくなる。左手が温かくなる。右脚が温かくなる。左足が温かくなる。両手両足が温かくなる。

 

・心臓が規則正しく打っている。呼吸がとても楽である。お腹が温かくなる。額が涼しくなる。

 

ここまでをひとつのパターンとして行いますが、【重くなる。温かくなる。】は、比較的簡単に実践できると思いますが、呼吸が楽、心臓が正しく打つなどは、実際に実感できなくても自分に言い聞かせるだけでも良いそうです。

 

・消去運動
ひと通り、自己催眠が終了した後は、必ず、首や両肩を回したり、腕を回したりといった、消去運動を行いましょう。

 

・注意
最後に注意として、器質的な疾患をお持ちの方は、専門医とよく相談してください。また、訓練を実践してかえって不安や緊張が増すように感じる方は、
訓練を中止してこちらも専門医の指導を仰いでください。

 

その他の治療・改善法

 

・心理カウンセリング
心の問題が原因の場合は、専門医による的確な心理療法が功を奏することが少なくありません。しかし、欧米に比べて、日本では心理カウンセリングを受けること自体が、まだまだ一般的に広がっているとはいえません。心理分析を試み、心の奥底に眠る原因を解き明かすことにより、自律神経失調症が劇的に改善する例も多くありますので、精神分析カウンセリングをいたずらに忌避せずに、積極的に受けてみることを検討してもよいかと思います。

 

・森田療法
森田療法は、森田正馬氏によって開発された、日本で生まれた心理療法です。元々はノイローゼや恐怖症など、精神疾患の治療法として長く実践されてきたものですが、自律神経失調症が心理的要因で発症した場合には、この森田療法が有効な場合があります。

 

・投薬治療
自律神経失調症と診断されると、まずは投薬による治療から始められることが多いです。心理的な要因の場合は、抗不安剤精神安定剤、心理的要因以外の場合は、自律神経調整剤交感神経遮断剤などが使われることが一般的です。しかし注意したいのは、薬には常に副作用というリスクがあるということです。特に、向精神薬は副作用が問題になることが多いにもかかわらず、心療内科や精神科の専門医は別として、一般内科医の場合は、副作用についての知識が浅く、安易に処方されることがあるので、副作用のリスクに関して医師とよく相談することが大切です。

 

・鍼灸、マッサージ
一般的な西洋医学による治療法で改善が見られない時には、東洋医学からのアプローチが有効な場合があります。東洋医学では、人間の体は陰と陽に大別されますが、その陰と陽のバランスが崩れ始めた状態が自律神経失調症といえるのです。治療には、鍼灸マッサージなどが行われ、副交感神経の働きを高めることで、全身の緊張状態を解き、血流を促進し、症状を緩和させます。

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